国書刊行会発行『明治5年6年大鳥圭介の英・米産業視察日記』 著者 福本龍より 文章抜粋

なんと2007年7月に発売されたばかり
英米産業視察の感慨    230ページ

大鳥圭介は明治7年帰国後・開拓使にアメリカの産業視察の結果を『石炭編』『石炭編図』『山油編』『山油編図』『阿膠編』(北海道庁文書館蔵)に詳しく報告した。
 このうちの『石炭編』内に『石炭編題言』として彼の今回のイギリス・アメリカの産業視察の感想、感慨を記しているので最後にこれを紹介する。
 大鳥は三宝という石炭・鋳(鉄)・山油(石油)のもたらした文明のありがたさ、利便性に感嘆するとともに、それらの工業のもたらす莫大な利益に目を向けている。
石炭編題言
世界の中に宝ととなへて人の珍重するもの幾千万ありといへとも今日人間の用をなして一日もなくて叶ハざるものは第一に石炭鋳油の三宝ならん。我国にても米麦綿麻木石の衣食住に要用なることは世の皆知るところなるとも、石炭鋳山油の用法に至りては未だ左程心を用ひざる人多しと思はる。
抑西洋各国并に米国に於いて今日文明開化の花を競へ栄曜自在の楽を極め、陸には蒸気車東西に亘りて蛛の網を張るか如く、海には蒸気船ありて鳥の谷を渡るよりもたやすし。都府はいふも更なり。小さき田舎の村にまても瓦斯の燭ありて暗夜を照し、十五夜の月も光を失ひ実に不夜城に入るが如し。家の内には瓦斯の燭と山油の燭を照し夜の闇を覚ゆることなし。是の如く栄花極楽自在自由の基を開きしは素より人智日新の功により各国内外通商有無交易の道盛にして金銀の融通豊なるより起ること疑なし。然れとも百工の製作月改日新千種の物産畳々発出するにあらされは、其物品に乏しきを以て拱手傍観するの外他なし。故に民を富し国を興すの要は必百般の工業を開くにあり。
               来月につづく