国書刊行会発行『明治5年6年大鳥圭介の英・米産業視察日記』 著者 福本龍より 文章抜粋

大鳥圭介の日記は、
ここ明治6年10月14日で終わっている。

イギリス、アメリカ産業を見学した実感だろうか、次の英文がある。   225ページ

Nothing is so easy
as the discovery of
yesterday;Nothing
is so difficult as the
discovery of to-morrow.
 昨日の発見ほど容易なものはない。明日、未来の発見ほど難しいものはない。
判ってしまえば「なーんだ。」と思える事でも それを初めて見い出すことは非常に困難だ。
                                      (英訳 知り合いの方にして頂きました。)
石炭編題言 先月のつづき231頁〜232頁
工業の道千差万別多き中に就て其基本となり最世に大切にて人に大益あるものは上にいへる石炭鋳油の三品ならむ。石炭なき時は蒸気車も走ること能はす、蒸気船も動くこと能はす。燭を以て夜の闇を輝すこと能はす、爐を以て宅内を煖むること能はす。鋳なきときは文明国に必要なる大小幾千万の器械家屋家財を作ること能はす。油亡きときハ右の器械を動かすこと能はず、又宅内を照すこと能はす、実に右三宝の大益を為し百工の根元なること驚くべきなり。我国人の如きは近来外国に交を結び内外有無融通日新の境に進むといへとも、爐には薪を燃し、火鉢に木炭を盛り、家屋橋梁は勿論、日用家財も多くは木を以て作り市中に街頭の燭なく、宅内も行灯の内に臭き油を燃して足れりとせる人多く、鋳は金銀よりいやしきものと考へ、石炭を船にのみ用ふるものと思ひ、山油を製して清き油となし又は蝋燭を作ることもよく心得たる人少なかるべし。我一昨春大命を奉して米国に渡り、更に英国に遊ひ、随て西洋諸国を巡歴し、百般の製作工芸を目撃し、其盛大なるに驚き、国の栄花民の歓楽の由て来る所を察し、又昨年夏英国を発して米国に帰来り、鋳山石炭坑油井地方を巡りて其工 業の高大にして利潤の莫大なるを聞き膽を破りたり。本邦にても南部の鋳鉱越後の山油且石炭の脈絡各地に蔓延し三宝無尽蔵の富をなせり。之を掘り之を製するに海外の新報を採用せは日本の富強を興す基本とならんか故に此編先づ右の三品を記し、次に種々の雑件を目撃質問せしまゝ録して以て世の人の工作を開く道しるべとならんことを希ふのみ。
 明治7年6月                              大鳥圭介識